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ダイバーシティとインクルージョンを考える「The Changing Workplace」を開催しました

2019.8.9

虎ノ門ヒルズカフェで6月20日、ダイバーシティ(diversity)とインクルージョン(inclusion)をテーマにしたイベント「The Changing Workplace」を実施しました。オーストラリア、ドイツ、台湾、そして日本から多様なバックグラウンドをもつ4人のパネリストが登壇し、自身の経験を振り返りながら、これからのWorkplaceのあり方について意見を交わしました。

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*1 ダイバーシティ(diversity):直訳すると多様性という意味で、ビジネスに当てはめると多様な人材を活かすこと。
*2 インクルージョン(inclusion):直訳すると包括・包含という意味で、ビジネスに当てはめると企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ活かされている状態。
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主催者:

  • ・Catalina Marketing Japan K.K.

スピーカー:

  • ・Sue Gannon Division COO, Global Development, Diversity and HR Strategic Advisor / Suntory Holdings Limited.
  • ・Markus Ruh VP of Human Resources / Adidas Japan
  • ・Moe Nasu Managing Director / Accenture Japan
  • ・Sean Chu Executive Advisor / Catalina Marketing Japan k.k.

司会者:

  • ・Natsue Ishida Senior Vice President Legal & Compliance / UD Trucks and JVs

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#日本のWorkplaceは変わり始めている

司会者:日本の職場、もしくは様々な企業で皆さんが目にしているWorkplaceのあり方の変化について、まずは日本で複数の企業に勤務した経験があるSeanさんに伺いましょう。

Sean:ありがとうございます。まずは自己紹介をさせてください。

僕は日本で1980年代から働き始め、ダウジョーンズやソニーピクチャーズ、マイクロソフトなどでの勤務を経験し、今はカタリナマーケティングジャパンでアドバイザーをしています。日本で働く外国人である上に同性愛者でもあるので、ダイバーシティとインクルージョンという点では、当時の日本はとても厳しい環境でした。なので、日本で働き始めた当初から自分が一歩先を行く必要性を感じていましたし、企業の文化自体も変化が必要だと感じていました。

当時と比較すると、状況はとても変わったなと思います。会場の皆さんが思うほど変化のスピードは速くはないですが、変わってきていること自体が素晴らしいことだと感じています。

僕が日本で働き始めたときは、女性は職場で常に制服を着用し、お茶出しをするのは女性の役目だという、古い慣習を持った企業が多かったです。その後(法令の関係で)女性や障がい者を一定以上の割合で雇う必要が出てきましたが、大企業でさえ、そのような方たちの雇用率を達成する方法は、社内にマッサージルームを設けることでした。

現在の企業は、ダイバーシティだけでなく、特にインクルージョンに力を入れて取り組んでいます。数字上のダイバーシティを作るのは簡単ですが、インクルーシブな職場を作る方が難しいからです。日本の企業だけでなく、世界中の企業が変化を求められていて、僕がいま所属するカタリナも努力をしています。採用において女性と男性は同じ割合になっていますし、女性のマネジャーが”ガラスの天井を破る”というのは注目されるトピックとなっています。

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Moe:私もSeanさんの意見に同意です。20~30年前、コンサルティングファームは、今で言うブラック企業と同じような状況でした。深夜まで必死に働いて成果を出さなければなりませんでした。ただ2006年以降の取り組みとして、パネルのタイトルと同様に、ダイバーシティやインクルージョンに着目し、さらにここ4〜5年は時間当たりの生産性に注意を払うようになりました。

その結果、女性社員の数が5倍になり、今でもさらに増え続けています。私は4つのプロジェクトを任されていますが、プロジェクトメンバーに男性はわずか1人で、他はすべて女性です。15年前はプロジェクトメンバーに女性は私1人だったので、これはとても大きな変化だと思います。

また、子育て中の女性や障がい者、LGBTの方々や親の介護をしながら働く社員にもサポートをしています。会社が方針を変えて数値目標を設け、その達成に経営陣を関与させることで、会社が変わっていい結果をもたらすと思います。

Markus:僕は20年間ずっとアディダスで働いています。皆さんと違って私のキャリアにはあまり多様性がありませんが(笑)皆さんの意見に同意します。

僕がアディダスジャパンに来たとき、たった4、5年前のことでしたが、組織における女性の割合が8%以下だったことがショックでした。また、ドイツのHQでは、40以上の国の方々が在籍していたのに、日本では外国人の数もとても少なかったのを覚えています。

マネジメントチームはそんな状況を改善するために「何年後に、女性の社員数をどれくらいにするか」といったKPIを決めて取り組み始め、現在ではその割合が20%になっています。女性のキャリア開発も同様で、女性の場合はライフステージに合わせて何が必要なのかを、企業が理解することが大事だと思います。幼い子どもを持つ女性の場合は、家族と仕事とのバランスが特に必要です。また社内で調査をしたところ、勤務時間や勤務場所の柔軟性を求める声が多く寄せられました。

それを受けて、現在では週に3日までの在宅勤務を認め、近いうちにシニアリーダーの男性が育児休暇から戻ってくるので、それを楽しみにしています。

Sue:私は日本で2年間仕事をしていますが、5年前にサントリーに買収されたジムビームに在籍していた頃も含めると、サントリーグループでは約7年間勤務をしています。私の出身はオーストラリアで、これまでに住んだことがある国は、日本、アメリカ、イギリス、ニュージーランドです。仕事ではアジアと多く関わっています。

 2年前、サントリーからグループ内の教育機関「サントリー大学」に来て欲しいと依頼があったとき、興味はありましたが、条件としてグローバルダイバーシティをサントリーに求めました。グローバルスケールでは、当時サントリーがめぼしい取り組みをしていなかったからです。

あまり知られていないことだと思いますが、サントリーの社員は4万人おり、そのうち2万人が海外で働いています。ただ、世界的な企業にも関わらず、グローバルダイバーシティについてはほとんど議論も取り組みも行われておらず、私はそんな状況に対して声を挙げました。

サントリーは会社としての基本的なことは日本で行っています。毎年、新卒の社員を採用し、全社員に占める女性の割合は50%で、昇進する年齢も少し下がってきており、組織として非常にいい状態だと思います。ただ、2年前に組織が抱えていた問題は、グローバルアジェンダだけでなく、この組織で女性をどのような役職につけるか、でした。

1年前、年齢が若い女性の社員に課長や部長といったリーダーになりたいか、と聞く調査をしたところ、興味深い傾向が見られました。「はい」や「いいえ」といった答えよりも「想像できない」もしくは「分からない」といった回答が多かったことです。これを受けて、組織としてもっと年次の低い女性社員が戦略的にキャリアプランを立てられるように支援をしなければならないと感じました。

#大切なのは、無意識のバイアスを少しずつ取り除くこと

司会者:12年前に私が日本に戻ってきたときも、日本の典型的な慣習が残る金融機関で女性のマネジャーになるのが少し怖かったのを覚えています。その後慣習が徐々に改善し、日本でも社会の風潮としてダイバーシティという言葉を耳にする機会も増えました。今では、政治家でも普通に口に出していますし、大きな進歩があったと思います。

さて、ここからは各企業の具体的な取り組みを聞いていきたいと思います。アクセンチュアでは、女性をマネジャーやチーフに抜擢し、これまで以上に広い領域で活躍できるような環境を整えたとのことですが、その詳細を聞かせてもらえますでしょうか。

Moe:Sueさんが話したことは、私もとても理解できます。アクセンチュアでも若年の女性社員にリーダーになりたいかと聞いたときに「分からない」という回答が目立ちました。周囲の男性社員たちも、女性社員をサポートしたいとは思っているものの、どうサポートしていいのかが分かっていませんでした。

そんな状況で私たちが気付かされたのは、その状況が誰かに起因している、というわけではなく、一個人として向き合えば互いに理解できるということでした。性別関係なく一人の社員として、その社員の将来の可能性に向き合うようにして、無意識のバイアスをできるだけ無くそうとしました。バイアスを取り除くためにまず取り組んだのは、誰もが無意識のバイアスを持っているということを理解することでした。

トレーニングの1つとして、内容が同じ履歴書を2枚用意し、それぞれ添付する写真を変えるという実験を行いました。1枚目は年齢が若くて好感が持てる可愛らしい男性の写真を、2枚目は気が強そうでボスに向きそうな女性の写真を添付し、どちらを選ぶかを聞いたところ、ほとんどの人は男性の写真が添付されている履歴書を選びました。

ここから分かることは、顔や名前、性別を見ることによって、無意識のうちにバイアスを持ってしまっているということです。マネジャー以上の役職に就いている社員には、無意識のバイアスを意識させるというトレーニングを受けてもらい、性別や名前で判断せずに、その人のポテンシャルを見るように促しました。これ以外にも取り組んでいますが、これが最近の事例です。

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Sean無意識のバイアスには同意できます。まだ実践には至っていませんが、カタリナの経営陣とは無意識のバイアスを取り除くための2つの試みをしようと話しています。

1つ目は、マネジメントトレーニングです。マネジメントというと日本企業では「リーダーについていく」という意味であると捉えて、進捗のマネジメントに偏りがちです。ゴール思考ではなく、働き方の好き嫌いという考え方になってしまいますので、まずはその考え方をシフトすることが大切です。

2つ目は、カタリナで少し苦労している点ですが、テクノロジーの問題です。社員の多様性を認めるには、個人個人のライフスタイルやワークスタイルを認めなくてはなりません。毎朝10時に行われるミーティングに出席しなくていいのであれば、社員の誰もが、様々な場所からいつでも働けるようにしなければなりません。そのためにはテクノロジーが必要で、さらにそれをうまく管理できるようにトレーニングすることも必要になってきます。カタリナでは、今まさにその点に取り組もうとしています。

司会者:チェンジ・マネジメントというのは、興味深い課題です。Markusは日本でこのテーマに取り組んできたかと思いますが、マインドセットを変えることについて詳しく聞かせてもらえますか。

Marcus:マインドセットは企業文化から影響を受けます。ですので、企業文化に着目をしないと意味がありません。まず行うのは、方向性を決めることです。僕たちの企業には、グローバル企業としての文化があり、インクルージョンやダイバーシティはその一部となっています。日本においても、シニアのマネジメント層に向けて、どうやってインクルージョンやダイバーシティを根付かせるのかを考えさせてきました。

もちろん一人一人のマネジャーに合わせて、そのような文化の中でどう過ごし、どうリードできるかといったメンタルのトレーニングや、無意識のバイアスを取り除くトレーニングを行いました。そうしながら、社員のマインドをどう変えるのかを考えました。

企業の文化は積み重なってきたものですので、一度にすべてを変えることはできないという認識を持つことは大切です。即効性を期待する社員もいますが、少しずつ変えていく、そのための最初のステップが何かを考えなければなりません。

具体例として、社員同士の交流の方法を変えました。日本でよく見られるように、壁で仕切られたデスクが並ぶレイアウトで、オフィスでは会話がなくメールやチャットでのやり取りが中心という状況から変えたのです。現在は決まった座席配置ではなく、オフィスに来た順番で好きな席に座ることができますし、お茶を飲みながらミーティングや交流ができるスペースを用意することで、社員間のコミュニケーションが少しずつ活発になり、社員のマインドを変えることに役立っています。

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#イノベーションは1人では起こせない

司会者:そのような取り組みをするには、企業文化や無意識のバイアスが障壁となりうるということですね。続いてSueさん。課題について聞かせて下さい。

Sue:ダイバーシティとインクルージョンを実現する上で、2つの障壁があると思います。

1つ目は、個人の障壁です。自分で自分を制限したり、他人を制限したりすることです。意識的であろうと無意識であろうと、誰しもが自分になんらかの偏見を持たれていると感じた経験はあると思います、これはとても意識的な偏見です。

次に、仕組みの問題があると思います。好きな席に自由に座れる環境が実現すれば、先ほどMarkusも話していたように、座席が固定されていたときのマインド、つまり勤務時間中にずっとその席に座っていないと上司に怒られるのではないか、といったマインドが無くなります。どこに座ってもいいいという仕組みにするのは、社員のマインドを変える一つの方法だと思います。

もう一つとして、リモートでの仕事を認めると、技術面で問題が出てきます。ただ、会社の方針として、リモートワークやフリーアドレスを認めるとなれば、仕事により効率的に取り組むこともできますし、その仕組みを取り入れることも容易になります。

個人的な障壁やダイバーシティやインクルーシブな考え方、会社の仕組みの問題については、色々な面から考える必要があります。最近受けた質問で「会社の制度で、社員が活用できているものと活用できていないものは何か」というものがありました。出社時間や退社時間といった柔軟な勤務制度については多くの社員が活用できていましたが、父親の育児休業制度はほとんど利用されていません。

家庭を持つこととリーダーになるためのキャリアを築くことは女性も男性も共通のコンセプトですが、男性が育児休暇を取らないのはなぜだと思いますか?

Sean:同僚はこう話していました。「男性は家で子どもの面倒を見たくない」って(笑)これは冗談ですが、男性が育児休暇を取るには様々なプレッシャーがあると思います。周囲の社員が怪訝な顔をしたり、出世に響いたりするのではないかと思うからです。

Sue:それは、男性が育児休暇と取るなんてけしからんことだ、という個人的なマインドと、会社組織の文化の問題の組み合わせだと思います。ただ、それも最近の日本では変わってきていると思います。

司会者:多くの時間を割いてトレーニングをしたり社員と対話したりする以外にも、実際に座席の配置を変えるなど企業は様々な取り組みをしていますが、企業にとってどのような意味があるのでしょうか。

Markus:多様なワークフォースが在籍していれば、レベニューも知見も高まり、さらに社員間のコラボレーションレベルも高くなります。自分の周りに、様々な国籍や違う視点を持つ人がいた方が面白いですし、多くを学ぶことができます。例えば、ドイツ人は日本人とは違う考え方を持っているということに気づいて互いに尊重しなくてはなりません。これが、ダイバーシティの核となる部分です。

Moe:個性を認めるというのは、素晴らしいことです。異なる環境で育ち生活している人がたくさんいることで、イノベーションが生まれると思います。1人だけではイノベーションを起こせません。特に現代のように変化が早い時代では、異なる文化や生活習慣を経験することで、新しいアイディアが生まれ、個性やそれぞれが育ってきた環境を尊重することで、新しいアイディアやイノベーションが生まれると思います。

Sean:現在社会の経済や企業の状況は、大きく変化しています。現在見受けられる保守的な企業文化は主に製造業から生まれたものだと思います。工場のマネジャーは生産ラインを止めることができず、そのために夜勤のシフトを組まないといけません。

しかし世界経済全体はその先に向かっていて、変革の中で生き抜くには、その競争を受け入れなければなりません。どうやって人をマネジメントするか、どう優秀な人材をマネジメントするかを変えなければならないんです。

Sue:付け加えるならば、いつも考えなければならないことは、自社の製品の消費者が誰であるのか、ということです。サントリーのメインの消費者は女性です。ただ、一概に女性といっても、人種や国籍などは多種多様です。社員全員が同じ考え方をするような企業だったら、様々な嗜好を持つ消費者をどうやって引きつけて、商品を売ることができるのでしょうか。

この考え方のもとで組織は大きく変化しなければなりませんが、時間もかかりますし、簡単なことではありません。それでも変化しようとするのは、それにとても価値があるということを分かっているからです。

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#職場環境を変えるために、個人ができることは何か

司会者:変化することは、企業はもちろんですが、働く社員一人ひとりにもメリットがあると思います。職場環境を改善するために個人ができることは、何でしょうか。

Sue:他のパネリストが、インクルージョンや意識的バイアス、無意識のバイアスについて触れましたが、自分をコントロールできるのは自分しかいません。自分がどんなバイアスを持っているのかに気付くのは、自分ができることの1つです。自分が持つ無意識のバイアスは何なのか、それがどのように表れてしまうのかを考えて欲しいと思います。職場で自分はどう見られているのか、他の社員をどう許容しているのかについても考えて欲しいと思います。

もちろん職場だけでなく、フェイスブックやリンクトイン、ツイッター、インスタグラムなどのSNSの意見を見ながら、周りの人たちが自分と同じように感じているのかを考えて、自分の周りにある多様性に気付くことが、自分を変えるベストな方法だと考えています。

Moe:約13年前に、私たちがダイバーシティやインクルージョンについて考えたときのキーコンセプトは「リーダー陣のコミットメント」でした。CEOやVP、ディビジョンリーダー、シニアエグゼクティブが自分たちにKPIを課しました。達成ができないものもありましたが、KPIがなければ彼らも社員も無意識のバイアスに気付くことはもっと大変だったと思います。みなさんも苦労しているようであれば、ぜひ相談してください。

Markus:個人として何ができるかという意味では、上司の指示を待つのではなく、自分自身の頭でより考えるようにならなければいけないと思います。変化を起こそうという考えが大切です。個人的には、日本ではそのような教育を受ける機会が少ないので大変だと思いますが、それによって会社も個人の能力や要望に気付くようになると思います。

Sean:個人ができること、というのは難しい問いかけですね。ただ1つ言えることは、インクルーシブになるというのは決してその人のことを好きにならなければならないということではなく、その人のことを理解して尊重するということです。それを理解することが大切だと考えています。

#オープンフロアオフィスが嫌いな社員がいたらどうするか?

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司会者:ありがとうございました。ここからは、会場の皆さんの質問を受けましょう。

質問者日本で働く外国人が増える中で、実際にどのような基準で多様性を保ちながら自社の強みを保ち続けているのでしょうか。

Markus:私たちがしているのは、人を異動させることです。世界中から日本へ異動させたり、日本の社員をアジア圏やHQがあるドイツに異動させたりします。そうすることで、社員のマインドもオープンになります。異動によって国際的なキャリアパスを提供することは、その人の労働市場での競争力維持にもなります。

Sue:サントリーは、日本国内での成長も維持しますが、国外での成長を速めています。マーカスが話したように、人の異動には私たちも取り組んでいます。特に日本人社員が海外でグローバルな経験を積んで、その経験を会社に持ち帰ることで、会社のグローバル化に貢献しています。

また、リーダーシッププログラムなど外部の感覚を社内に持ち込む人材開発の取り組みもしています。サントリーには典型的な日本の人事制度があり、離職率も非常に低いです。日本での採用は問題ないのですが、海外が問題ですね。

質問者:私のようにオープンフロアのオフィスが嫌いな人はどうしたらよいのでしょうか。

Sue:私の会社には、仕切りがある席もいくつかあります。ただ、面白いのはいつも同じ人が座っていることですね。だから大丈夫!

Markus:私の会社では、フィードバックセッションを毎月設けています。順調に進んでいること、そうではない取り組み、改善した部分などをヒアリングするものですが、決定事項を実施していなければ非難される、というようなものではありません。ただ、社員にオープンフロアのいい点を理解してもらおうとはしていますが、それがすべてうまくいくとは限りません。

Sean:マイクロソフトでは社員の席の数を減らすことから始めて、社員の数に対し(固定の席を)約47%にまで減らしました。自分の席を確保したいのであれば毎日朝7時に出社をしないといけないので、どうするかは自分で選ぶしかありません。

Sue:私の会社で興味深かったのは、カジュアルな服装に切り替えることへの抵抗感がすごかったことです。フレキシブルな時間での勤務など与えられた自由は多くありますが、ドレスコードに関しては議論が激しくなりました。

Moe:私の会社は、朝早く出社した社員の100%勝ちですね。私も自分のデスクはキープしたい派ですから気持ちは分かります。ただ、席に関係なく、スラックなどのデジタルツールでも社内の他のコミュニティと繋がることはできます。チームのスタッフがどこに座っているのかを知らなかったら、ブレインストーミングなどはツール上でしてしまいます。

質問者:変化を望まない社員もいますか?

Markus:新しい取り組みを始めるおよそ4~5カ月前に、これから起こる変化について説明し、何がどのように変わるのかを個別で話すこともあります。社員とコミュニケーションを密にして、何を求めているのかを感じることが大切です。

1つ学ばせてもらったのは、多くの社員が仕事に集中できる静かな環境を求めていることでした。それは、社員からのフィードバックの中にもあり、それを受けてサイレントルームを設けました。

Sean:個人的な経験から言わせてもらいますと、変化に反対する社員はいて、特に営業チームはその傾向が高いと思います。営業チームは社内よりも社外の顧客に向き合うことが多いわけですが、営業先には保守的な顧客もいるからです。ただ、レベニューも大切なので、そこは意識しないとなりません。

質問者:無意識のバイアスと関連した質問です。日本の履歴書には写真や性別、生年月日など様々な情報を記載しますが、今後それは変わる必要があると思いますか。

Moe:無記名で写真も添付せず、性別も記載せずに、その人の経験や才能で見る方が絶対いいと思います。会社独自のフォーマットを変えるのは難しいかもしれませんが、私たちの会社はそのフォーマットを変えようとしています。ゆくゆくは、それが広がっていくといいと思っています。

Sue私もあの履歴書にはショックを受けますが、新卒採用の典型的なリクルートメントではそもそもその人ができる仕事や経験で採用しようと考えていません。その人がどんな人で、企業文化に合うかということに、ほとんどの企業は着目しているでしょう。

そう考えると、名前や性別、写真、趣味、自分がしたいと思う事などが、その人を理解する唯一の方法になります。ただ、それは私たちの会社が日本国外でしていることとはまったく別です。私たちは、仕事に対する特定の能力だけを見ています。

質問者:会社で起こる変化の大半は、特定の個人からの声や要望がきっかけとなると思います。普段は声をあげるタイプではないけれども、1つだけ内に秘めた要望があるという社員がいた場合に、そのようないわば小さな声をどのように拾っていますでしょうか。

Markus:1つは、普段からそういった要望を持った社員に声を挙げても大丈夫だと伝えることです。さらに、何か特殊な状況があるのであれば、例えば教育を受けられるようにメンターを配置します。3つ目は会社に対する社員の意見を聞くことです。四半期ごとに匿名で社員からコメントが届く仕組みを作っています。匿名の方が声を挙げやすいからです。

Moe:私の会社には、メンターとスポンサーシステムという仕組みがあります。メンターは毎日決まった社員の勤務状況を把握し、毎月もしくは隔月でミーティングをします。マネジャーがメンターになることもあります。

またスポンサーシステムは、社員個人の才能やその社員が活躍できそうなチャンスを見つけて、与えるための取り組みです。職場の環境やプライベートが影響して仕事での新しいチャンスを見つけるのが難しくなっているのであれば、サポートをします。

この2つの仕組みで、社員が取り組みたいことをできるようにサポートしています。また、これらとは別に3つのイニシアティブがあり、いずれも個人の能力に応じた役割やプロジェクトに従事できるようケアする目的を持っています。毎年、すべての社員についてプロジェクトごとの成長を把握し、個人のニーズや問題点をあぶり出しています。


パネルディスカッションも質疑応答の時間も、大いに盛り上がりました。カタリナマーケティングジャパンでは今後もこのような取り組みを通して、ダイバーシティとインクルージョンの重要性を発信してまいります。

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